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君と二人で真顔になって「愛してる」なんて言ったら それだけで もうそれだけで (休日/THE YOUTH)


by haruki701

行き着く場所(SS)


雑誌を読んでいると、さっきまで制服から私服に着替えていたはずの奈月の体温を、背中で感じた。
多分、座って、額を背中に押しつけてるらしい。

『ねぇ…ちょっと、こっち向いて、』

そう言って身体を離すから、向かい合うように、座り直した。
奈月の目は、不安そうに揺らいでいるから、何か抱え込んでるんだなって、すぐにわかる。

『よしくん、』

消え入りそうな、小さな声で呟いて、両手を握ってきた。

『どうした?』

手を握ってきたまま、俯いた奈月に、問う。

『身体の力、抜いてさ、目、つぶってくれない?』

俯いたまま、力なく言った言葉に、従う。
目をつぶってしまったから、視界は真っ暗で、手が動かされているのだけ感じる。
何かを、両手で包み込まされたのがわかった。

『このまま…両手に、思いっきり力入れて、』

そう言うのと同時くらいに、手の甲に、何かの液体が落ちてきたから、思わずつぶっていた目を開いた。

『、奈月…』

目の前の光景に、言葉を失う。
なんとなく、気付いていたような、気付いていなかったような、そんな感覚。
俺の両手は、奈月の細い首を包み込むように置かれていて、手の甲に落ちてきた液体は、涙だった。

『このまま…あたしのこと、殺して、』

涙に濡れて、不安そうに揺らぐ瞳に、苦しくなって、言葉が出て来ない。

『ねぇ、っ、よしくん…』

ギュッと奈月が目をつぶると、また、ポタポタと涙が落ちてきた。

『、なんで?』

やっと出てきた言葉はちっぽけで、何の役にもたたないような言葉だった。

『いつか、よしくんが、あたしのこといらなくなる前に、あたしを好きだって、愛してるって、思ってるうちに、あたしのこと、よしくんの手でっ…』

思わず、奈月を抱き締めた。
でも、そんな日は来ない、なんて、言えなかった。
思っていても、言ったところで、役にたたないって、わかっていたから。

『一生、あたしに囚われて生きてよ、苦しんで、ねぇ、よしくん、』

あぁ、そんなこと言うなよ。
そんな悲しいこと、言わないでくれ。

『奈月、』

抱き締めて、名前を呼ぶだけで精一杯な俺と、腕の中で泣きじゃくる奈月と。
お互いがわかってる。永遠なんて、存在しないって。
どんなに、今、お互いが想いを口にしても、いつか終わる。

なぁ、でも、俺は奈月となら信じられる気がするんだよ。
なんて言っても、きっと奈月の不安は消えないだろう。

『奈月、今、お前を殺したとしても、俺は、お前に囚われてなんて生きないよ』

涙で、ぐしゃぐしゃになった奈月の頬を包み込んだ。

『なっ、で…』

『お前を殺したら、俺もすぐ、後を追うから』

奈月は、小さくばかって呟いて、胸に顔をうずめた。

奈月が俺に抱く不安と、俺が奈月に抱く不安が違っても、行き着く場所は同じだろう。



墜ちるならば、ふたりで一緒に。
by haruki701 | 2009-06-19 23:09 | 携帯